ネット通販印刷のメリット・デメリット
低価格、短納期をキャッチフレーズにインターネットで印刷物が注文できるネット通販印刷が増えています。方や顔が見えない、会話もない、一方通行の流れ作業的無機質なやり取りに不安を感じ、経験と知識が豊富な担当営業が小まめに対応してくれる印刷会社に頼まれている方もいらっしゃいます。或いは、両方を上手く使い分けている方もいらっしゃいます。
ここでは印刷のプロが感じた「ネット通販印刷」のメリット、デメリットを分かり易く解説したいと思います。
ネット通販印刷5つのメリット

1:価格が安い
ネット通販印刷の最大のメリットは、価格が安いということです。特に小物の少部数カラー印刷等では威力を発揮してくれますね。輸入の安い用紙や材料、資材を使い、複数の印刷物を付合せて同時に印刷することでコストを抑えています。色ずれや汚れ、混入や誤配といったリスクと隣り合わせですが、恩恵を受けた方もたくさんいらっしゃる事と思います。プリンターやカラーコピーのように、フチに余白も取らなくて良いので見栄えのいい仕上がりになります。

2:納期を選ぶことができる
発注の際に予算と相談しながら工場出荷日を自分で選ぶことができるのはネット通販印刷の魅力です。通常は、印刷会社の担当者に確認をし、工場の混み具合によって、希望納期を先へ延ばすこともあります。こうしたストレスがないこともネット通販印刷のメリットだと思います。季節的要因も含め工場出荷から商品到着まで運送状況がひとつ心配なところですね。

3:金額をすぐに確認できる
通常の流れで印刷会社に見積もりを依頼する場合、担当者と連絡を取り、細かな仕様を伝え、見積り書が提出されるまでに少しの手間と時間がかかります。ネット通販印刷の場合、価格がホームページ上に掲載されているので、予算取りをする場合には便利ですね。但し貴方がクリエーターやエージェントであれば印刷価格がクライアントにも丸見えなので都合の悪い場合も。また、最低100枚単位なので余分が出てしまうこともあります。

4:24時間発注が可能
ネット通販印刷なので24時間発注をすることができます。個人のクリエイターが印刷まで請け負っている場合、昼夜に関係なくクライアントの都合で夜遅くまで対応をしていることなど日常茶飯事でしょう。納期は決められているのに校正のOKが夜遅くなることもよく有る事です。こうした場合でも、ネット通販印刷なら出稿するのが可能です。ただし、規定の時間を過ぎてしまうと、翌日受付になり納期や金額も変わってしまうので注意が必要です。

5:印刷会社に連絡する必要がない
ネット通販印刷の場合自分のペースで発注ができます。印刷会社或いは担当者の都合に合わせる必要がありません。また、基本的に営業活動を受けることもないので、忙しいときや時間、手間を気にする人からすれば大きなメリットでしょうか。
ネット通販印刷12のデメリット
ネット通販印刷のメリットをお伝えしましたが、メリットはそのままデメリットになることもあります。デメリットを総称すると、「自動販売機」に例えられます。お金を入れて、好みの商品のボタンを押す。取り出し口から出てきた商品を自ら拾い上げる。間違えたらもう一度最初からやり直しです。終始コミュニケーション、言葉のキャッチボールがありません。ここからはネット通販印刷のデメリットについてひとつひとつお話ししましょう。
1:企画、提案は期待できない
ネット通販印刷は「印刷物」の注文をコールセンターのサーバーが受信するだけなので、企画や提案等は一切期待できません。例えば、「最近どんな色の商品がよく売れている?」「消費者の動向は?」というような質問にサーバーは応えてはくれません。単なる機械です。
遠隔地でチラシを配布する場合、折込部数や配布エリア、地域のローカルな情報や方法、手段なども、自ら収集、手配することになります。こうした場合は、現地に詳しいエージェントを頼んでおく必要があります。

2:印刷物自体へのアドバイスがもらえない
ネット通販印刷の場合、印刷業務の経験に乏しい人が受注処理をしている場合が多く、専門知識が不足していることがあります。商品を取り扱うというより、マニュアル通り、流れ作業的に”モノをサバク”といった感じがピッタリと当てはまるでしょうか。例えば、商品ラベルを作成する場合、艶のある紙がいいのかマット系の紙が合うのかで迷ったとします。また、紙は厚い方がいいのか、薄い方がいいのかで迷った時。或いは紙の目や取り勝手、特性によって、用紙代が大きく変わってくる場合もあります。パンフレットや冊子を作る場合の効率的なページ数や用途に即した製本方法、用紙等へのアドバイス。こうした専門的な知識や疑問は、経験の豊富な印刷会社の営業担当に意見を聞くことが最も効率的であり経済的です。このような質問をネット通販印刷に問い合わせても答えは帰ってきません。結果としてネット通販印刷よりかえって安価に、またスピーディーに仕上がる場合も多々あります。日頃から印刷会社の担当者とのコミュニケーションを小まめにとっておくのも必要かもしれませんね。

3:発注が面倒でミスしやすい
ITリテラシーの高い方、インターネットでの購買に慣れた人であれば、ネット通販印刷を使うことに余り抵抗はないかもしれません。しかし、ネット通販印刷での発注は通常のネットショッピングとは少々訳が違います。最初のアカウント登録から発注物の仕様選択、納期の計算、決済から印刷データのアップロードまでの一連の作業にはかなりの神経を使います。やはり印刷会社の担当者に電話をして発注する方が簡単で確実で安心です。発注ミスも発生しません。ITリテラシーにもよりますが、使い勝手の悪いネット通販印刷のホームページは、分かりづらいとか操作が面倒だと感じることがあります。当然そこには、発注ミスが生じます。

4:ミスもそのまま印刷される
印刷物につきものなのがミスです。刷ってしまえば修理ができません。印刷会社もそういう眼で原稿を見ています。ところがネット通販印刷の場合、エラーなくアップロードされ、受け取ったデータは完成されたモノとして扱うため、発注者が数量や用紙、納期など仕様を間違えない限りミスとしてはあり得ません。ミスをフォローしてくれる”眼”いわば安全装置が働かないからです。印刷会社の場合、担当者が「前回と紙を変えるんですか」「ここの文字が違います」とか言ってくれる場合がありますが、ネット通販印刷の場合大量の印刷物を流れ作業でさばいているため、ミスもそのまま流されてしまいます。

5:データチエックの精度には各社に差がある
ネット通販印刷に発注する場合は、完全データであることが大前提です。llustratorやPhotoshopなどプロが扱うアプリケーションソフトで作成されたものは、プロのデザイナーに任せるしかありません。注意してチエックしなければならないのが、WordやExcel、PowerPoint等のOffice系のアプリケーションソフトで作成されたデータです。高解像度のPDFに書き出して出稿することになりますが、データチエックには、ネット通販印刷各社のレベルにかなりの差があります。データチエックのための専門人員を確保しているネット通販印刷会社と受注担当がチエックしている会社では、急ぎの案件など時間的な制約もあり、データチェックの精度に差が出てきてしまいます。

6:出稿後のデータ修正ができない
印刷データを出稿してから、クライアントから修正が入った、文字の間違いに気づいた、そんな時再度データを修正して送稿し直さなければなりません。印刷会社の場合は、工程を一時中断して、修正に対応してくれることがありますが、ネット通販印刷の場合、工程を一時中断してまで対応してくれる事はまずありません。その他の注文の納期に影響が出るからです。最悪の場合刷り直し、再発注という事態が想定されます。

7:データの保管、管理ができない
同じデータを差し替えして増刷を繰り返す場合、最新のデータを管理しておく必要があります。発注者側或いは、デザイン事務所で管理されている場合は問題ありません。印刷会社で管理してもらえるケースもあります。しかし、ネット通販印刷の場合、量が膨大な余りデータの管理をしてくれるところは少なく、最新データを発注者側で管理する必要があります。旧のデータで修正をしてしまいミスをすることも想定されるので、データ管理には細心の注意が必要です。最近では、一定期間データを保管してくれるネット通販印刷もありますが、出稿用に文字をアウトライン化してしまったデータでは修正がしにくいので、それほどよいサービスとは思えません。

8:サポート体制
ネット通販印刷に発注した場合、「注文受け付けました」の返信メールは届きますが、指定通りに納品されるかどうかを確認することができない場合があります。カスタマーサポートに電話しても中々繋がりづらく、メールを送っても返信が遅いといった話をよく伺うことが有ります。こうした不安から、常連のお得意先や高額になる大量部数の印刷物は、しっかりとした印刷会社を選ぶケースが多い傾向にあります。また、急に100枚だけ急ぎで必要になったなんて都合にも印刷会社なら柔軟に対応してくれますね。現在ではメールで出荷連絡をしてくれるネット通販印刷会社も有るようですが、果たしてそれで十分なのか確認しておく必要があります。特に、広告代理店など中間で仕事を扱う担当者は、「信頼できる印刷会社」を選びたいですね。

9:色見の指示を出すことができない
ネット通販印刷は複数の印刷物を付合せて同時に印刷することでコストを抑えています。なので、基本的には”標準濃度”という設定で印刷をしています。カラーコピー機のようですね。最新の印刷機はほぼオートマチックで、素人が印刷してもデータのまま印刷ができるようになっていますが、そんな会社ばかりでもありません。安いが故に一昔も二昔も前の機械で印刷せざるを得ない場合もあります。気温や湿度によっても色は変わってきます。こうした会社に同じものの増刷を発注するとまず同じ色では上がってきません。印刷会社では、記録してある前回の色データを元に色出しをするので色目が変わることはまずあり得ません。印刷途中でも抜き取り検品をして、色や汚れのチェックも怠りません。そこまでシビアに管理するのが本来の印刷物を創る者の有るべき姿です。
更に、”青を強めに”とか”赤を控えめに”というような詳細な指示を出すこともできませんし、もちろん本機色校正や刷り出しに立ち会うなど不可能な話です。会社のマークやロゴのコーポレートカラーが違うなってあり得ませんね。ネット通販印刷に発注する場合は慎重な判断が求められます。

弊社では商品毎に「製品管理カルテ」を作成し一点一点厳重に色管理を行っています。
10:特殊な印刷、加工、大ロットの印刷には適していない。
ネット通販印刷は、省力化と商品仕様の画一化、絞り込みで価格を下げているので、特殊な加工がメニューに無かったり、髙かったり、納期が異常にかかるなと感じたことはありませんか。大ロットの印刷物は逆に高かったりしませんか。印刷のラインから外れる工程や不得意な分野では、ネット通販印刷のビジネスモデルに反して、コストが跳ね上がるからです。また、トムソンで型抜きや筋入れやミシン目を入れたり、PPやニスで表面加工を施すには、印刷会社に頼むことになります。通常のプロセスカラー(青、赤、黄、黒)以外のインクに対応していないため、メタリックや金色、銀色、蛍光色などの場合には”似た色”近似色で凌ぎ、取りあえずの間に合わせ色になります。特練り色「特色印刷」と呼ばれる、いわば職人的な”技”の必要な場合もやはり印刷会社に頼むことになります。

11:付け合わせ印刷(合版印刷)ができない。
紙質・紙厚・色数・刷り色の条件が整った場合「付け合わせ印刷」で印刷代金を安く抑えるという方法が有ります。また逆にすべての条件を合わせれば「付け合わせ印刷」で印刷代金を安く抑えることも可能になります。環境保護の面においても資源の使用を極力減らすことで環境への負荷を抑えることができるというメリットもあります。しかしネット通販印刷では、1アイテム毎の扱いとなってしまうため「付け合わせ印刷」に対応していません。更に送料もそれぞれに含まれます。
但しケースバイケースで条件は変わってきます。すべて「付け合わせ印刷」の方が得とは限りません。案件毎のご相談をお勧めいたします。

12:環境対策への未対応
2015年9月に国連で開かれたサミットの中で決められた、国際社会共通の目標”SDGs(エスディージーズ)「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)”に沿って「環境に配慮しない企業の商品は買わない、使わない」という意識が生まれ、厳しい視線で企業が選別される時代において、ネット通販印刷業界では「環境対応印刷への取り組み」が全くなされていません。低価格、短納期が故にやむを得ないで済まされる時代では無いことを業界として受け止め、一日も早くしっかりとした取り組み、対応を切望します。

変えるものと残すもの

印刷業界はアナログからデジタルへ、印刷からプリントへ、職人からオペレーターへと急速にスタイルが移り変わりました。技術の進歩により商品を作り上げる為の行程や手間、時間も短縮されました。また色に対する精度、許容範囲も昔ほど厳しくありません。”緩くなった”が正しいでしょうか。更に高性能のデジタルカメラやプリンターの出現により印刷の入口から出口までのプロセスも変わり続けています。
変えるものと残すもの、この見極めが今とても重要です。
弊社はこれからも「心をつかむ品づくり」をモットーに、お客様の声を拾いながら「五感で創る」を胸に刻み、熟練の技を磨き、新たな試みにも積極的に取り組み「もっと良い品づくり」に励んでいきたいと考えます。
